2013年9月22日日曜日

 【ちょっと気になるアート入門24 伊藤若冲 1716~1800】 「大震災がつないだご縁」

鳥獣花木図屏風(上:動物が29種類、下:鳥が46種類います。)

http://fukuhen.lammfromm.jp/?p=18770
東日本大震災復興支援 特別展「若冲が来てくれました 
プライスコレクション 
江戸絵画の美と生命」を見てきた。

今回、世界的な若冲のコレクターであるプライス夫妻が、
東北3県への復興を支援したいと申し出たのが、そもそものはじまりだ。

もちろん、伊藤若冲作品がメインであることは、確かだ。
しかし、「江戸絵画の美と生命」とあるだけに、作品群もまた多様だ。

プライス夫人の悦子さんのお言葉を借りると、江戸絵画の魅力は、
1.みていて楽しい
2.色彩が美しい
3.技術(が素晴らしい)
ということなのだそうだ。

確かに、これだけのコレクションを魅せられたら、反論できない。
(もちろん、反論する気など、さらさらないが…。)

今回の若冲作品で言えば、真っ先に、
≪花も木も動物もみんな生きている(鳥獣花木図屏風)≫があげられる。

悦子さんが、被災者に見て元気になってもらおうと思い、
そもそも、今回の特別展を催すきっかけになった作品だ。

これは、若冲が仏教から強く影響をうけた世界観「草木国土悉皆成仏」(そうもくこくどしっかいじょうぶつ:草木や国土のように心を持たないものでさえ、みんな仏性があるから、成仏する)という考えを表しているとされる。

僕は、この作品の持つ明るさとともに、どことなく「ノアの方舟」に通じるような、
新しい世界を作っていかなくては、いけない責任のようなものを感じた。

あまりの動植物の多さからか?
86,000もの桝目の1つずつ色を塗る、点描を彷彿とさせる精緻な「桝目描」に魅せらせたからか?
それはわからないが…。

その他の若冲作品で言えば、鯉のうろこに筋目描の特徴がよく出ている≪飛びはねたコイ(鯉魚図)≫や鶏のドヤ顔よろしく≪日の出をつげるオンドリ(旭日雄鶏図)≫、鶴の立つ対比の構図が面白い≪竹と梅と二羽のツル(竹梅双鶴図)≫など、どれも躍動感があり、生命力が強く伝わってくる作品ばかりだ。

竹梅双鶴図





他にも素晴らしい作品が多いが、本当に全ての作品を
書いてしまいかねないので、この辺にしておく。

プライスさんいわく、自分のコレクションから
1点だけしか持ち出せないとしたら・・・もっていくのはこれなんだそう。
森狙仙作 猿図 





今回のコレクションは、若冲以外にも、「長沢芦雪」、「曽我蕭白」「森狙仙」などの有名どころから、
葛蛇玉」「河鍋暁斎」など通、いやはっきり言ってマニア好みまで、寄せられた豊富なコレクションは、被災者のみならず、多くの日本人を楽しませ、元気づけたことと思う。

「美しいものは、心の支えになる」
妻の悦子さんがインタビューで語っていたこの言葉は、真実だ。

また、展示作品1つ1つにわかりやすいコピーをつけたり、図屏風の見方を解説したり、
高校生以下は無料と言った様々な取り組みに、未来を担う子どもへの気持ちの篤さを
強く感じさせる
ご夫婦のお人柄のあふれる、そんな展示であった。http://jakuchu.exhn.jp/index.html

右から、悦子・プライスさん、ジョー・プライスさん、“若冲の火付け役”辻惟雄さん

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