2013年10月27日日曜日

【自殺戦争の敵はだれか?】


映画『Saving 10,000: Winning a War on Suicide in Japan』を見た。



交通事故で亡くなる人が16,000人を超えた1970年。
“交通戦争”とキャンペーンを張り、官民一体となって、その戦いに挑んだ。
その結果、2012年で4411人。さらに、2018年(平成30年)を目途に
2,500人を目標に対策に取り組んでいる。



一方、自殺者は、どうか?


統計のある平成22年までで、年間30,000人以上の自殺者を13年以上続いている。

確かに、日本社会の中で、“自殺”を美化する文化的背景もあるかもしれない。
だから、世界的に見ても、上位にいる。



だが、果たして、そうだろうか?

もし、そうだったら、人口の一定数の%に応じて、
多少の前後はするものの上下間を推移するのではないか?


そう思ったのはなぜか?
映画を見ていて、気になったフレーズが出てきたからだ。
“自殺ウイルス”
“ウイルス”と言われるくらいだ。感染力がある。
では、何によって感染したのか?

この映画で述べられているのは、“報道”だ。
報道は、自殺を“ショー”にしている。

確かに、WHOが出す『自殺を予防する自殺事例報道のあり方』に
抵触するケースが多々見られる。

【自殺を予防する自殺事例報道のあり方ですべきこと】

○事実の公表に際して保険の専門家と密接に連動する
○自殺は自殺成功とではなく自殺既遂と呼ぶ
○関連する情報だけを中面記事として公表する
○自殺に代わる手段を強調する
○電話相談や地域の支援機関に関する情報を提供する
○危険指標や危険信号について周知させる

【自殺を予防する自殺事例報道のあり方ですべきでないこと】

○写真や遺書を公開しない
○具体的で詳細な自殺手段を報告しない
○単純化した理由付けをしない
○自殺を美化したり、扇情的に扱わない
○宗教的な固定観念や文化的固定観点を用いない
○悪人探しをしない
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自殺者が爆発的に増えた年、1998年

日本の年間自殺者数(警察庁発表データによる)が、
前年より8000人以上増加して初めて3万人を超える。
中でも、50代の自殺が急増。

一体、何があったのか?
調べてみた。

象徴的な事件もあった。
それにより、“自殺報道”は増えただろう。

ただ、それだけが原因なのか?
確かに、【流行語】も、“貸し渋り”、“日本列島総不況”など、
経済的に暗い世相を映している。


ちなみに、前年である1997年も付記しておく。


話を戻す。

仮に、原因がわかっても、
個人に何ができるのか?
人の悩みは、お金、人間関係、健康に集約されるという。
でも、その割に、セーフティーネットが、あまりにも頼りなさすぎる。

平成18年、第一次安倍政権の国会で、
消費者金融と、自殺者に関するある質問がなされた。


要約すると、借りた人間が
自殺による保険金を以て、
返済した件数、4,908件。

1人の平均借入社数、2.54件。
4,908件÷2.54=約2,000人。

これだけの人が、結果として自殺による
生命保険で借金を返済したことになる。

借りたものは返す。
その原則で、契約社会は回っている。

ただ、命を投げ出してまで、
返すことを強要されるのが正しいのか? 

なにか方法はないのか?

東京都は、“ゲートキーパー”として、自殺予備軍への声掛けを進めている。

宗教家は、身近な人に声をかけることや、
笑顔で接するなど、「無財の七施」で、“一隅を照らす”ことを説く。




ここまで書いて思う。
自分も、同じように場面で、その1人を救えるのか・・・?

・ブルーライトが効果的だ、
・新宿の20代、30代の女性の自殺率が突出している、
・作家がこれほど自殺する国は他にない、
・自殺での保険金の免責は1年だから、13か月での自殺が多い、
 今は2年だから、25か月目の自殺が多い…。

こんなこと知っていても役に立つのか?
わからない…。

でも、誰かにパスする、それしかない。
そんな祈るような気持ちしかない。


東尋坊で自殺予防の声掛けをしている茂幸雄さんの
『自殺したらあかん-―東尋坊の“ちょっと待ておじさん”』から、引用する。
岩場に座っている人を見つけたら、最初、どんな言葉をかけるんですか?

ごく普通の挨拶言葉です。

せっかく旧友と会ったのですから、
  こんにちは…!
  どちらから来られましたか?
  ここまで来るの、大変でしたでしょ?
  途中で、渋滞に巻き込まれませんでしたか?
  何時ごろに、ここに着きました?
  日本海の海はね、一見穏やかに見えますが、
  いったん海が狂い出すともの凄いんですよ…
  あの高い岸壁が波に飲み込まれてしまうんですよ…!
  しかし、いったん荒れが治まると、何事も無かったように平穏な姿に戻るんです。
  ところで、今日はこの後どうされますか?
  「宿」は取ってありますか?
などと話しかけます。”

こんな普通の言葉が、誰かの悩みに触れ、
その人を救うことにつながる、
その瞬間に至る前のサインに気づけば・・・。
誰かを救えるかもしれない。

この監督が、映画を作ったきっかけは、隣人の自殺だ。
何回も、何回も、サインを出していたのに…。
10,000人を救うと言いつつも、隣人1人も救えなかったと悔やむ。

最初に挙げた、『自殺戦争の敵はだれか?』の問い。
監督の答えは、『鏡の中にある』、つまり、無関心の自分自身だ。

そして、その問いは、僕にも向けられている。





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