2013年10月5日土曜日

【ちょっと気になるアート入門11:エル・グレコ1541-1614】

facebookに投稿をした以前のものを、ブログ転載を機にバージョンアップさせました。
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肖像画家、宗教画家として、ベラスケスゴヤとともに、
スペイン三大画家に数えられるエル・グレコ展を、鑑賞してきた。

エル・グレコ「無原罪の御宿り(お宿り)」 1607-13
カンヴァス・油彩 347cm × 174cm サンタ・クルス美術館蔵



“一度見上げたら、忘れられない。”
このコピー、掛け値なし。


3mを越える祭壇衝立「無原罪のお宿り」は、
下から見上げた時の迫力は圧倒的。


この下で、宗教儀礼が行われたところを想像するに、絵画、彫刻、建築を
融合させた空間プロデューサーとしてエル・グレコの力量には、驚かされた。



また、『無原罪のお宿り』については、
特に、マニエリスム(Mannerism)と呼ばれる
ルネサンス後期の美術傾向の影響が顕著で、
縦長のキャンバスに聖母マリアが天を仰ぎ、
今まさに高く昇っていく様子が、
左右にうねるようなダイナミックな表現で描かれている。

これは、おそらく移動しながら、鑑賞する人たちに、
動きを与えるためのものではないか、と考える。

つまり、アニメと一緒だ。

だからこそ、システィーナ礼拝堂の天井画
ミケランジェロによる壁画「最後の審判」も含め、
このマニエリスム様式が見られるのではないか?



肖像画家としてのエル・グレコに、話を戻す。


彼の作品は、 本当に表情の優しい、絵の視線が、観者にぴったり合う、
生命力あふれる絵を描いた。

「修道士オルテンシオ・フェリス・パラビシーノの肖像」1611年 ボストン美術館

当時のスペインにおいて肖像画のモデルは、
王侯や貴族がほとんどだった。

しかし、グレコは宗教者や、大学教授など、新しい知識エリート層を顧客ターゲットとして注目した。

目の付け所が、素晴らしい。
ビジネスマンとしての素養も、 十二分にあったと考えられる。


おそらく、虚栄心をそそりながら、
肖像画の価値を伝え、売りまくったのではないか?
(すいません、僕のイメージ、若干強めに入ってます・・・)


その結果、トレドは、スペインの都市として、
はじめて、貴族と知識階級の顔ぶれが、
後代まで、長く知らしめることになったそうだ。

“名を残した芸術家の近くには、必ずビジネスと官能がある”
ここでも、同じことが言えるのだと思う。


さて、エル・グレコとは、「ギリシャ人」を意味する愛称。

そう呼ばれるようになったのは、スペインでは低かったとされる芸術家の地位を、少しでも高めようとしたからか?

つまり、クレタ島生まれを最大限に生かして、
異国情緒というか、外からのスタンスを手に入れたかったからなのか…。

そういう意味では、一種の「ブランド戦略」だととらえることもできるかもしれない。

いずれにせよ、芸術家だけでなく、ビジネスマンとしての、エル・グレコにも、
インスパイアされる、貴重な体験ができた。


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