あらゆる組織が
活動の評価尺度を必要とする。
再設計や修正なしに、長期にわたって成果をあげる活動はありえない。
あらゆる活動が陳腐化する。
この事実を無視するのが政府である。
何も止められないことが政府の最大の病であり、かつその原因である。
病院や大学も、昨日を捨てることについては政府より若干ましなだけである。
企業の人たちも、官僚と同じように昨日に愛着をもつ。失敗すれば努力を倍加する。
しかし、幸い、企業は好きにしているわけにはいかない。
市場という冷徹な規律のもとにある。
客観的な尺度としての収益性がある。
意に染まなくとも、成功しえないもの、非生産的なものは捨てざるをえない。この経済性が、政府、病院、軍にとっては制約要因にすぎない。
あらゆる組織が変化しなければならない。
したがって企業以外の組織は、企業にとっての市場と収益性に
相当する規律と尺度を必要とする。
それぞれの組織がそれぞれの尺度を必要とする。
(『断絶の時代』)
ACTION POINT
あなたが参加しているNPO(非営利組織)に活動の評価尺度をもたせてください。
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規律は、『線路』である。
規律である『線路』があることで、1)やることが決まっているので、迷わない。
2)目標までの最短距離を取れる。
3)素早い判断が下せる。
もちろん、そこから外れることは許されない。
外れたならば、脱線だ。大事故になる。
しかし、その「線路」が陳腐化していたら、どうなるか?
「電車」である組織は、早晩、脱線するだろう。
では、陳腐化させないために、どうすればいいか?
①陳腐化しないものを規律にする。
②規律を見直すことをルールに入れておく。
③いつもの規律と違う環境を作る。
①は、「線路」を「裁定者≒お役所、国土交通省」に決めさせるやり方。
常に変動していく「市場」をルールメーカーとし、
その「市場」の決定に合わせ、是とするやり方。
本文にあるのは、このパターン。
②は、「線路」を点検するやり方。
現在のルールと現実の食い違いがないかを見極める。
変えるべきものを変え、見直すものは見直す。
③は、「線路」のない環境をあえて作るやり方。
国を変える、テスト環境に身を置く、別の路線を作るなど
新しい可能性を探るというもの。
規律はマネジメントの強力な武器になる。
ただし強力であるからこそ、
使い方を間違えれば、大きな枷となる。
メリットを活かし、デメリットをどう抑えるか?
そこの巧拙に、企業の個性と戦略が現れるはずだ。
公的機関の6つの規律
さらに、ドラッカーは、『マネジメント──課題、責任、実践』[上]で、あらゆる公的サービス機関が、6つの規律を課す必要を説いている。
(1)事業の定義
「事業は何か」「何であるべきか」を定義する。
ありうる定義をすべて公にし、それらを徹底的に検討する。
それらを徹底的に検討する。必要とあれば、異なる定義、しかも
一見対立する定義を採用し、バランスを計る。
(2)目標の設定
その定義に従い、明確な目標を設定する。
(3)活動の優先順位
活動の優先順位を検討し、活動領域を定め、
成果の基準すなわち最低限必要な成果を規定し、
期限を設定し、担当者を明らかにし、成果をあげるべく仕事をする。
(4)成果の尺度
成果の尺度を定める。
それは、例えば、AT&Tが尺度とした顧客満足度、
明治の日本が社会発展の尺度とした識字率である。
(5)成果の評価
それらの尺度を用いて、自らの成果についてフィードバックを行う。
成果による自己管理を確立する。
(6)活動の廃棄
目標と成果を照合する。
目的に合致しなくなった目標や、実現不可能であることが明らかになった目標を識別する。
不十分な成果や非生産的な活動を識別する。不十分な成果に資金とエネルギーを
投入し続けることのないよう、非生産的な活動を廃棄するシステムをつくりあげる。
このうち、ドラッカーは、第六のステップが最も重要であるとした。
これは、即ち、成功を生んだ行動が習慣化したがゆえに、
新しい現実を認められなくなる今日の政府であり、
『チーズはどこに消えた』のヘムのようになること防ぐためだ。
2 件のコメント:
中島さん、いつも参考にさせていただいております。活動の廃棄、というのが一番難しいと思います、とくに組織が多くなれば。
yutacaさん、ありがとうございます。
ほんと、組織が多くなれば、大変ですよね。
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