2013年9月25日水曜日

【ちょっと気になるアート入門21  貴婦人と一角獣展 】人生のタピスリーをつくっていくのだ。 自分の意思という縦糸で、他者と生きるという横糸で。

facebookに投稿をした以前のものを、ブログ転載を機に、バージョンアップさせました。
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連作タピスリー『貴婦人と一角獣』より「我が唯一つの望みに

タピスリーとは、そもそもなんなのか?

フランス語でタピスリー、英語でタペストリーと読む綴織壁掛(つづれおりかべかけ)のこと。製織方式は平織(ひらおり)の文様織。ふつう竪機(たてばた、経糸を垂直に張って織る機)を用い、経糸(たていと)に麻糸、緯糸(よこいと)に太い毛の染め糸(また絹や金銀糸なども)を用いる。緯糸を適当な長さに通して絵柄を織り出し、自由に絵画的主題を表現する。(weblioより)

今回、僕が見たのは、国立新美術館のホールを包む、壮大な6 面の連作タピスリー。
なんといっても、まず、その大きさに驚く。圧倒的な存在感。

最小のもので、312cm×330cm。
最大のもので、377cm×473cm。
通常、建築現場の養生シートは180×360㎝

こんなものが、居住空間に6枚も飾られているのだから、
どれだけ家(城?)が広いかということは、想像に難くない。

話が変わるが、個人的に、“ちょっと気になるアート”に出会うと、
3つの視点で、 整理するようにしている。

1.表現者(製作者)
2.評価者
3.支援者(スポンサー)

例えば、現在のマンガを例にとると、
1.漫画家
2.編集者(読者)
3.出版社(読者)
と言う感じだ。

ただ、芸術作品が面白いのは、
“時代を越える”、ことだ。

1.表現者(製作者)はかわらないのに、
2.評価者、3.支援者(スポンサー)が変わることだ。

それによって、埋もれていた“アート”が、
ある日、突然「日の目」を見る。

話を戻す。

今回のタピスリーもいわば、2.評価者が、眠っていた“アート”を掘り起こしたと言え
最初の、3.支援者(スポンサー)については、こう考えられている。

ペスリーの中に描かれた旗や、ユニコーンや獅子が身に着けている盾には、フランス王シャルル7世の宮廷の有力者だったジャン・ル・ヴィスト(Jean Le Viste)の紋章(三つの三日月)があり、彼がこのタペストリーを作らせた人物ではないかと見られている。ジャン・ル・ヴィストがリヨン出身であり、獅子の「lion」はリヨン「Lyon」から、一角獣は、足が速いためフランス語で「viste」(すばやい)とル・ヴィスト(Le Viste)の一致によるものと言われている。

1841年、歴史記念物監督官で小説家でもあったプロスペル・メリメが現在のクルーズ県にあるブーサック城(Château de Boussac)で発見。タピスリーは保存状態が悪く傷んでいたが、小説家ジョルジュ=サンドが『ジャンヌ』(1844年)の作中でこのタペストリーを賛美したことで世の関心を集めることとなった。1882年、この連作はクリュニー美術館(中世美術館)に移され、(wikipediaより)”

2013年、それが貸し出され、東京、そして、大阪に展示され、現在に至る。

今回の『貴婦人と一角獣』は、それぞれ「触覚」「味覚」「嗅覚」「聴覚」「視覚」
「我が唯一の望み」と名付けられたと呼ばれるタピスリーの作品群。


僕がこの一連のタペスリーを見たときに、ジョルジュ=サンドと同じ感想を持った。
赤地に、斜めに入る特徴的な青。そこに配置された三日月。

彼女は、タピスリーに織り込まれた旗にイスラム由来のものを感じた。
そして、そのインスピレーションに物語をつける。

“これらのタペスリーは、フランスに幽閉されたオスマンの王子が、
そこで出逢った姫に恋をし、贈り物として捧げたのだと… 。”

事実は違うようだが、
しかし、それはある意味どうでもいいのかもしれない。

本が作者のもとを離れ、読者のインスピレーションの中で完成されるように、
壮大な芸術作品も、また鑑賞者の新しい芸術に引き継がれていくとも、言えるのだから。

そして、僕らも、人生のタピスリーをつくっていくのだ。
自分の意思という縦糸で、他者と生きるという横糸で。

そのバランスによって、どんなものができあがるのか?
“いい年した大人” なのだが、まだわくわくしている。

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